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コラム⑩考察: 「中小企業の電力高騰化対策」【かしこい選択とは】


◆  中小企業の電力高騰化対策  ◆ 【かしこい選択】を考察する


自らは初期費用を負担することなく「自家消費型太陽光」を導入し、「初年度から、電気料金を削減する」。さらに
地域のSDGs活動にも貢献できる万能スキームがここにある。 

 

 まず、自家消費型太陽光導入において、最初に留意すべき点を整理しておこう。

太陽光発電設備の導入にあたっては、まず投資回収期間(よく言われる「単純回収年数」)を考慮する必要がある。

一般的に、7年から10年程度かかるが、メンテナンスや予期せぬコストも考慮すると、より長期的視点にたった資金計画が求められる。特に、初年度から電力料金の削減メリットを享受したい場合は、15年以上の借入をもって、年間返済額の軽減が必要とされている。しかし、これに適した銀行融資制度はない。まさしく、この15年超の「長期ファイナンススキーム」不在が、自家消費型太陽光普及にあたっての大きな課題となっている。このため多くの企業は、長期ファイナンスの代替手法として、PPA契約(「Power Purchase Agreement」(20年間の電力販売契約))を利用することになる。つまり、自家消費型太陽光導入に際し、キャッシュフローの健全化こそが最大の留意点なのである。

 

太陽光発電設備の導入後、メンテナンスを充分にしていても、パワコン等の瑕疵による突出コストが発生する?!

 太陽光発電設備の投資にあたっては「ライフサイクルコスト」を精査する必要がある。期中の突出コストリスクの主原因は、パワーコンディショナー(パワコン)の瑕疵故障によるものだといわれており、15年程度で入れ替える需要家もいるほどだ。これは馬鹿にならない突出コストである。メーカーの保証期間は限られており、15年目以降の対策が必要とされているのはこのためである。PPA契約(Power Purchase Agreement)は、こうした突出コスト回避策としても活用されている。20年間の電力料金を固定することで、突出コストリスクを軽減するのだが、一方で電力固定契約は、地域の電力会社が、電気料金を減額した場合、「機会損失リスク」を負うことは否めない。なんとも悩ましいところである。

 

「でも・しか」のPPA契約ではあるが、締結するには自社の信用力が審査される。

PPA契約では、PPA事業者が、20年間の突出コストリスクを回避しつつ、投資総額を回収するため、需要家には一定の信用力(※)が求められている。しかし、日本の企業の多くがこの基準に達していないことから、それが中小企業への自家消費型太陽光(PPA契約)の普及を妨げる大きな要因となっているのだ。

(※)一般に、PPA契約で求められる信用ランクは、信用評価機関の評点50点前後(実質は評点60点前後)ともいわれている。日本の企業の80%以上が評点50点以下なので、PPA契約は、中小企業にとって、いかにハードルが高いかがおわかりいただけるであろう。


以上のように、中小企業が、「投資負担ゼロ」で、「電力料金を初年度から削減できる」スキームは実質的に今までなかったのである。つまり、これが、中小企業が主体となる地域脱炭素が進まなかった最大の理由なのだ。
 

 

需要家の「信用力に関係なく」、かつ、30kWからの小規模太陽光の導入に適したスキーム「Roof Plus」(ルーフプラス)とは?

R5年10月、中小企業専用の自家消費型太陽光導入スキームとして「Roof Plus(ルーフプラス)が発表された。15年間の分割払スキームで、初期投資負担なくして、初年度からの電力料金削減メリットが期待できる。20年間のパワコンの瑕疵保証や、遠隔監視装置による常時監視、異常時には無償での緊急出動などが含まれる国内初のパッケージスキームである。電力料金相当額(換算)は、19円から24/kWh程度(※)であり、中小企業経営強化税制の適用により、さらに3円から5/kWh程度の節税効果も期待できるのだ。

※最も安い関西電力エリアにおける高圧電力料金は、おおよそ23.43円/kWh 程度 (R5/11)  
(参考):電力料金推移資料 (出所:新電力ネット) 【電力料金一覧】

 

「Roof Plus」は、自治体の公式ホームページでも紹介されている。

「Roof Plus」は、地域の中小企業が脱炭素化に取り組む支援策として、損保会社とリース、認証機関などが開発した「ローカルSDGs支援スキーム」である。導入企業には、災害時の、地域住民の携帯電話の無償充電スポットとして、自社の太陽光発電設備を活用する「民間防災拠点ネットワーク」への参画を推進し、協力企業には「Admired company」としてRDoが認定するなど、地域活性化にも貢献する。自治体はこうした取り組みを支援し、その情報をホームページで紹介しているのだ。
兵庫県ホームページ掲載】【大阪府ホームページ


筆者
は、この「Roof Plus」の一部機能を活用することで、「地方創生型・脱炭素社会」を具現化したいと考えている。まずは、その推進の担い手であり、環境政策実現会社として「地域再エネ会社」の設立から考えていきたい。次回から、具体的な自治体の事例をもとに進め方をご紹介する。

 一般社団法人 日本再生可能エネルギー地域資源開発機構 代表理事 境 内  行 仁

【バックナンバー】
コラム①.地域の力を活用して脱炭素社会を実現する!
コラム②.PPAは地域脱炭素を進める夢のビジネスモデルか?
コラム③.「地域再エネ会社」ってわかりますか?
コラム➃.「地域再エネ会社」はPPAを主力事業とするべきか?(前編).
コラム➄.「地域再エネ会社」はPPAを主力事業とするべきか?(後編)
コラム⑥.「地域再エネ会社」は本当に儲かるのか?
コラム⑦.「地域再エネ会社」を設立しよう
コラム⑧.「地域再エネ会社」設立の要となる「3つのしくみ」とは?
コラム⑨.「一般社団法人 地域再エネ会社」の設立で地方創生型・地域脱炭素を実現する。