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コラム⑤「地域再エネ会社」は、PPAを主力事業とするべきか? (後 編)

「地域再エネ会社」設立をお考えの行政の方に、PPAモデル組成上の主要リスクと、その対策を含めた事業会社の内部事情をコラム④からご紹介してきた。

 

あたりまえだが、PPAは発電ビジネスである以上、設備が止まっては電力収入が滞ってしまう。よってPPA事業者は20年先までのリスクを想定しヘッジモデルを設計する。PPA事業会社が、どんなリスクと対策を想定しているか? また地域再エネ会社においては、どう対応すべきかご紹介しよう。

 

リスク①.そもそも発電設備設置にあたる工事会社の信用力は大丈夫か? 
工事会社に対しては、工事技術は当然のこと、長きにわたりメンテナンスを委託することになるので倒産してもらっては困る。さらに言うと、PPA事業者に長期事業資金を提供する金融機関も、設備に瑕疵があってはたいへんと、この点には厳しく、工事会社の選定に介入してくるのが一般的だ。多少コストが高くても、信用力ある大手工事会社を選定する意味はここにある。一方、地域再エネ会社の場合、地元工事会社を選定したいところである。しかし、やはりここは、経験と信用力のある大手工事会社を元請とし、その下請けとして地元工事会社を育成していくのが得策だろう。

 

リスク➁.PPAに供するパネル、パワコンメーカーの信用力は大丈夫か?
設備の不具合に際しては、通常、動産総合保険や、メーカー保証などで対応している。例えば、パワコンに不具合がおこった場合、まずはメーカー保証に頼ることになる。もし、パワコンメーカーが倒産していたらどうだろう?  そのリスクはPPA事業者が負担しなければならず、突発コストを回避するためにもメーカーの信用力はしっかり精査しておかねばならない。最近では、メーカー保証を超える期間を延長保障する会社も現れ、有事の際の突出コストをおさえることもできるのだ。

リスク③.自家消費型太陽光が常に稼働するよう監視しているか?

最近の屋根おき自家消費型太陽光のメンテナンス事情も変ってきたのでご紹介する。まず、年に二回程度の訪問コストをかけてのメンテ契約を省略するケースがでてきている。代わって、遠隔監視システムを駆使して常時監視し、有事の際にはメンテ会社に一報するカタチをもって「発電故障の即時発見」と「コスト削減」を実現しているのだ。地域再エネ会社におけるメンテナンスは、「延長保障」と「遠隔監視」を組み合わせることでコスト削減し、稼働率を高め発電収益を維持しなければならない。

 

さて、「地域再エネ会社」が担う主力事業としてPPAモデルはふさわしいか?
そもそも地域再エネ会社とは、得られた収益を地域に還元するとともに、地域課題の解決に貢献する会社である。そこでは、需要家のメリットを最大化することはもちろん、事業者リスクを最小化すると共に、地域の強みを最大限に活用した地域の担い手ならではの事業体にしなければならない。

 

コラム④⑤と、PPA事業のリスクとその回避策をご紹介してきたが、PPA事業がいかに複雑なモデルであるかご理解いただけたと思う。その事業を、そのまま地域再エネ会社で展開するのはかなり難易度が高い。筆者が考える最適解は、需要家視点に立ち返り、そもそものPPAに需要家が求めるメリットを拾いあげ、既存のスキームやモデルを紡ぎ合わせることで代替できないか?  PPAではないが、PPAのメリットを紡いだ「パッケージスキーム」を地域再エネ会社で再現する、というものである。以下詳しく述べよう。

 

 

PPA最大のメリットとは「投資負担ゼロで、電力料金を今より下げられる」再エネ導入手法であることであった。
これを実現するには、「長期のリース」と、機器メーカーの保証期間を超える「延長保障制度」、さらには簡単効率化メンテともいえる「遠隔監視」装置を組み合わせたパッケージスキームをつくればいい。

さらに、そのパッケージスキームを、地域再エネ会社の「地元ブランド(信用力)」を活かして需要家に紹介し、成約した場合に手数料をアライアンス内で配分する取組こそが最適な座組であると考えている。地域の担い手のリスクはゼロ。リスクヘッジの専門家たちとアライアンスを組んで、地産地消と、富の地域循環を実現する方法として有効である。

 

リスクを負担する専門企業と、地元名士をこの座組に巻き込もう

そのためにも、地域再エネ会社の強みは「地元ブランド」という信用力であることを再認識いただきたい。その信用ブランドを活用して、地元経営者チャネルを開拓することで、全体の事業コストを削減できる。つまり地域需要家のメリットが拡大する。地域再エネ会社の株主には、商工団体、地域金融、地元インフラ会社など地域の需要家ネットワーク擁する名士に参画いただく必要性はここにある。次稿からは、富の地域循環にむけ機能する地域再エネ会社の事業性について、さらに委細検討する。

 

  代表理事 境内 行仁

 

【バックナンバー】
コラム①.地域の力を活用して脱炭素社会を実現する!
コラム②.PPAは地域脱炭素を進める夢のビジネスモデルか?
コラム③.「地域再エネ会社」ってわかりますか?
コラム➃.「地域再エネ会社」はPPAを主力事業とするべきか?(前編).
コラム➄.「地域再エネ会社」はPPAを主力事業とするべきか?(後編)
コラム⑥.「地域再エネ会社」は本当に儲かるのか?
コラム⑦.「地域再エネ会社」を設立しよう
コラム⑧.「地域再エネ会社」設立の要となる「3つのしくみ」とは?