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コラム⑥ 「地域再エネ会社」は、本当に儲かるのか?

「地域再エネ会社」は儲かるのか?
 結論から言おう。答えは「yes」である。

 まずは、筆者が試算した結果をみていただこう。筆者の提唱するスキームで、自家消費型太陽光100kWを地域の需要家に紹介して得られる粗利益は、12百万円超(15年間累積)となる。

 

試算条件を以下に記す。

 

①.需要家.中小企業 (信用評価機関のランク50点の先)、➁.容量100kW、③過積載含めて全負荷時間1200時間、④イニシャル原単位 18万円/kW、➄.減衰率 0.5%/年 ⑥.電力単価 25円/kWh相当(従量料金のみ)で中小企業に提案したケースである。 ちなみに、23円/kWhの場合でも9百万超のノンリスク収益が入ることになる。

 地域の需要家(中小企業)にとっても適正な価格で再エネ電力を長期購入できるメリットがある。しかも中小企業経営強化税制の適用者には、機器相当分の10%の税額控除、あるいは即時償却の優遇措置があるので、さらにメリットが広がるのだ。

 

「儲けの源泉は?」
 いかがだろう?   適正な再エネ電力価格を提示して、なぜそんなに儲かるのかと驚かれたのではないだろうか? 

しかしこれは事実である。 繰り返すが、この儲けの源泉は、需要家を紹介するだけで得られる「手数料収益」である。 よって、地域再エネ会社のリスクは「ゼロ」。エネルギーの素人である地域の担い手が運営する「地域再エネ会社」としては、経営上最も重視すべき点が満たされているといえる。

 

 また、PPA事業のような自己資金を投じて20年間にわたる電力料金で回収する「与信業務」(※)ではないので資金繰りの心配もない。なので月一件ずつの成約でも、運転資金のやりくりの心配もほとんどなく、会社としては充分成立する利益レベルである。

 

※(与信業務とは) 銀行が、企業や個人に資金を貸し出し、複数年間で回収する業務のことで、これを与信業務という。PPAモデルも、太陽光設備を投資代行し、需要家からの20年間の電力料金(分割)で分割回収するため、与信業務といえる。

 

「地域再エネ会社」は誰が設立するのか ?     儲かる「地域再エネ会社」の座組とは? 
 まず最初に言っておくが、自治体に出資していただく必要はない。「民業圧迫を回避する」、そんな理由からではなく、自治体には他にやっていただきたいことがあるからだ。

 

 では、誰に参加いただくのがよいか一例をあげてみよう。例えば、 地銀、信金、商工団体、ライオンズ倶楽部や、地方ガス会社、生損保代理店、カーディーラーなどの既存の法人取引先、会員ネットワーク擁する地元の中核企業である。 なぜならば、地元中核企業に営業を代行してもらうことで、地域再エネ会社の最大コストである「営業費」を大幅に削減できるからである。会社設立に際して、この座組が一番大切なポイントになる。

 

法人組織としては「一般社団法人」として、中核企業各社には「理事」として参画いただくのである。この社団法人は、地域脱炭素に貢献する地域総意の会社であり、資本金(基金)なくして法人は設立できる。

  なにより大切なのは、地元中核企業の「安心のブランド」である。一般社団法人に各社が参画し、取引先である地域企業に脱炭素スキームを普及するのだ。 中核企業の活動でえられた富とノウハウは、地域の「器」である「地域再エネ会社」に蓄積され、結果として地域全体の富の拡大に繋がっていく。では、「一般社団法人 地域再エネ会社」による紹介ビジネスとは何かを考えてみよう。

 

オンサイト型PPAモデルをベンチマークして、地域再エネ会社独自の紹介モデルを作ろう。
 まず、PPAモデルの需要家メリットは何かを考えてみよう。メリットは大きく2つになる。
ひとつは、イニシャルレスメリット。よく言われる「費用負担ゼロ」で太陽光設備を導入できるメリットである。

 

では、この需要家メリットを再現するモデルとは何か?

  PPAモデルを一言で言うと、「PPA会社が発電設備をもち、20年程度の期間で元本金利、手数料を電気代として回収する」もの。つまり、長期リースと変わらない。 発電量に応じて、電気代として徴収されるため定額回収のリースより得した気分になるが20年間の発電量はほぼ予測できるし発電量が予想に反して下がった場合に補償する「保険」もある。

 

結論、一件あたりの紹介で、地域再エネ会社の粗利 10百万を確保して、需要家むけ23~25円/kWh程度の電気代を創出するためには、15年程度の長期リースを組めれば、PPAとほぼ同じ需要家メリットがつくれるのだ。 

 

 

もうひとつのメリットは、期間中の突出コストがないこと。
PPAは、電力供給を約する契約なので、需要家は、メンテ代や、保険代、さらには、パワコンなどの不具合に対応するコストなど、様々な突出コストリスクからは切り離されるメリットがある。 ならば15年の長期リースに、それを付加すればいい。 しかし、よく考えてみてほしい、PPA会社も同じリスクにさらされているということを。

 

そもそもPPAモデルは、投資額を一定期間に回収し、期待リターンを得るビジネスであり、こんな不安定要因は排除しなければならない。大手PPA会社は、この不安定要因を専門家にリスクヘッジしてコスト平準化を実現している。地域再エネ会社のモデルとして、「15年リース」と、リスクコスト平準化に資する「保険」をパッケージ化したモデルで、PPAと同じ需要家メリットを創出できるのだ。

 

 以上、世の中に既にある「しくみ」を組み合わせれば、PPAと同じ需要家メリットが創出できることをお伝えした。

では、次稿からPPAモデルにない、自家消費型太陽光を普及するには欠かせない「地域再エネ会社」独自の「しくみ」について解説する。

                                代表理事 境内 行仁

 

【バックナンバー】
コラム①.地域の力を活用して脱炭素社会を実現する!
コラム②.PPAは地域脱炭素を進める夢のビジネスモデルか?
コラム③.「地域再エネ会社」ってわかりますか?
コラム➃.「地域再エネ会社」はPPAを主力事業とするべきか?(前編).
コラム➄.「地域再エネ会社」はPPAを主力事業とするべきか?(後編)
コラム⑥.「地域再エネ会社」は本当に儲かるのか?
コラム⑦.「地域再エネ会社」を設立しよう
コラム⑧.「地域再エネ会社」設立の要となる「3つのしくみ」とは?