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コラム⑦ 「地域再エネ会社」を設立しよう 

 

 

「脱炭素先行地域」を目指す自治体の皆さんへ

 「脱炭素先行地域」に採択された自治体でよく見かける事例だが、採択をもってすべてが達成したが如く安心してしまい、肝心な脱炭素ビジネスは、民間企業にお任せ、とばかりに放り投げてしまう事例がなんと多い事か。しかし本当の肝は今、採択されたこの時にある。脱炭素先行地域は、ごく限られた地域のゼロカーボンを実現するだけで、言ってみればお試しでしかない。当然ながら、地域全体に脱炭素ドミノを展開するためには精緻な事業戦略が必要になる。

 

「地域再エネ会社」の事業モデルの設計こそが自治体に最も求められるところなのだ。
 筆者は、自治体は、その責任として、利益の最大化をミッションとする民間企業と、綿密な「地域再エネ会社の事業設計」をしなければならないと考えている。

 

 民間企業は言う、「最初は自治体からの需要家紹介で再エネ開発を垂直立ち上げするが、そのうち、すべてを地域に任せる」と。 この意味をよく考えてほしい。おそらく地域の方は、「民間企業が、脱炭素事業を立ち上げ、その富とノウハウを徐々に地域に移管してくれる」と解していないだろうか?  かもしれない。が、民間設備工事会社によるPPA事業の場合、収益のほとんどは再エネ設備の売り上げにあり、その後の運営については、リスクマネジメントコストが発生するだけで、全く儲けにはならないのだ。

 先の民間の言葉を換言すれば、「利益の最大化にむけ、需要家紹介などで、自治体さんには紹介支援をしてほしいが、大口優良顧客がなくなったら、あとは地域でなんとかしてほしい」と言っているのだ。特に地域最大ポテンシャルである、中小企業の屋根上太陽光などは、設置先の規模や、信用力脆弱を理由にカバーしてくれないケースがでてくる。自治体に、ここまで見抜ける専門性を求めるのは酷なのだが。

 

  結論として、地域脱炭素にむけて、自治体の企業とのアライアンスは絶対必要だが、それとは別の第三者との連係も必要だ。政策実現の視点と、ビジネスの両視点で地域を支援する組織、()に「Energy Agency(中間支援組織)とでも命名しよう。こんな新たな機能を備えた公的組織が喫緊に必要になると考えている。

 

 

そもそも「地域再エネ会社」って必要なのか?

 答えは「yes」。理由は大きく3つある。

 

まず、地域脱炭素の推進主体として、「再エネ・省エネインフラ開発会社」が必要である。特に電力の自給自足への取組は、エネルギーの安全保障の観点から地域の持続的発展に寄与し、災害時においては無償給電スポットとして大切な地域防災インフラネットワークになるからである。

 

二つめの理由は、

 富の地域循環と、地域課題の解決を目指す「政策実現会社」として必要である。地域資源を活用して得られた再エネ収益は、なんとしても域外に流出させたくない。その為には、あらゆる再エネビジネスノウハウを地域に蓄積、拡充することで、富の地域循環を生み出していく「器」が必要になる。この器こそが「地域再エネ会社」である。

 

三つめは

 カーボンニュートラル社会実現にむけて「2030年度 目標達成には、自家消費型太陽光しか現実的な解決策が残されていないから」、筆者は、その専門会社が必要だと考えている。

 

えっ!?  2030年脱炭素目標達成にむけて、自家消費型太陽光しか解決策がないの?

答えは「yes」。地域によって多少事情は異なるが、現時点において「市町単位の地産地消」を目的とした、中・大規模な再エネ発電所の開発は、系統容量の確保や追従電力の確保、電力市場の変動リスクなどから、地域新電力だけでは取り組みづらい状況にある。 

 

一方、系統容量などの制約がない屋根置き太陽光システムは、地域再生可能エネルギーのポテンシャルを最大限に発揮する現実的な手段として注目されている。しかし、この市場、各市町を調査してわかったが「取り残された最大ポテンシャル」とも評されている。というのも、開発にあたる大手エネルギー会社がいないから。つまり、設置先の規模、信用力の点から地域の大半を占める中小企業は大手エネルギー会社の営業対象とならないからだ。

せっかくの地域ポテンシャルも脱炭素の推進者が不在では宝の持ち腐れ。これが取り残された最大ポテンシャルと言われる所以であり、中小企業の屋根上太陽光こそ、地域が主導して最優先に取り組まなくてはならいない市場なのである。

 

「地域再エネ会社」設立後、自治体にお願いしたいことはたったひとつ

自治体の強みは、その信用力である。つまり、「お墨付きの力」こそが「地域再エネ会社」の事業を飛躍的に発展させる原動力になる。「地域再エネ会社」が擁するモデルにお墨付きを与えることこそ最大の支援策となり、結果、株主企業は、取引先に対して、お墨つきモデルを堂々と紹介できるからこそ、そこに好循環が生まれるのだ。

 

「地域再エネ会社」が地域脱炭素で成果をあげるために最も必要とする「しくみ」について、次稿以降でご説明する。 

            代表理事 境内 行仁

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