コラム➁ PPAは地域脱炭素を進める夢のビジネスモデルか?
PPAは地域脱炭素を進める夢のビジネスモデルか?
地域に委ねられた、地方公共団体実行計画(区域施策編)。その主力ポテンシャルである「中小企業の屋根上太陽光」。いま、自家消費型太陽光を普及する最有力手段は投資負担ゼロで設置できるオンサイト型PPAとされている。しかし、それは本当に機能しているのだろうか? 答えは「No」である。正確に言うと大手エネルギー会社に依存したPPA導入はほぼ期待できないのだ。
PPA事業とは「与信事業」 地域の小規模中小企業は対象外になる!?
PPA事業者に聞いてほしい。「地域の小規模企業に100kW程度の太陽光をPPAで導入してくれないか」と。答えは、おそらく「No」であろう。彼らの判断はこうだ。「300kW以下は営業効率の観点からやりたくない。さらに、信用調査機関の評点が高い先でないと審査がとおらない」これは、PPA事業が、太陽光発電設備を電力需要家に代わって投資代行し、電気代として長期回収する「与信事業」の側面があるからなのだ。
与信事業とは「金融機関が顧客に融資し、ある一定期間で元本と金利相当を回収する」事業
PPA事業も与信事業と同じである。顧客が倒産すれば、電力債権が回収できなくなる。つまり太陽光発電設備の投資額と利益の回収ができなくなり大損することになる。だから、PPA事業者も需要家の信用力をきっちり審査する。では、PPA提案の対象とされるためにはどの程度の信用力が必要か? PPA事業者にヒアリングしたところ、信用評価機関の評点で50点以上はほしいところ、と言うのだが、日本の企業のうち8割程度は評点49点以下というデータがある。つまり地域の小規模企業はPPA提案の対象にされないケースが多いのだ。
PPAに期待するメリットはイニシャルレス効果 (投資負担ゼロで「▲電力料金> 返済額」が実現)
かつて、ESCO事業といわれる省エネ設備の導入スキームがあった。これは、空調や照明などの省エネ化を図り、コスト削減できた範囲内でサービス対価を支払うというもの。まさしくイニシャルレス提案。投資負担なくしてメリットのみを享受できる素晴らしい取り組みなのである。
PPAに拘ることなかれ。リースでも、割賦でも長期のスキームが組めればイニシャルレス効果がある。
太陽光設備を費用負担ゼロで導入し、電力料金削減額の範囲内で対価を支払うPPAの原型は、このESCOにあるともいえる。いずれにせよ、長期の分割払い(15年程度の長期イニシャルレススキーム)で発電設備を調達できれば、一回当たりの支払いを、電気料金の削減額内におさえられるのだ。
PPAは地域脱炭素の道具としてオーバースペックである。
筆者は、地方公共団体実行計画(区域施策編)の主力ポテンシャルとなる中小企業むけ再エネ普及策として、PPAはオーバースペックだと考えている。いま、大手PPA事業者は、PPAスキーム組成の手間に見合った収益を求めて、信用ランクの高い需要家の、大きな屋根上に集中しているのである。おそらく大手の屋根上が一巡する2030年になっても、わが町、中小企業の屋根上に興味を示してくれるPPA事業者は現れないだろう。ではどうするのか? 地域のことは地域でするしかない。独自のイニシャルレススキーム擁する「地域再エネ会社」(≠地域新電力)の設立が必要だと考えている。
代表理事 境内 行仁
【バックナンバー】
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コラム②.PPAは地域脱炭素を進める夢のビジネスモデルか?
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コラム➃.「地域再エネ会社」はPPAを主力事業とするべきか?(前編).
コラム➄.「地域再エネ会社」はPPAを主力事業とするべきか?(後編)
コラム⑥.「地域再エネ会社」は本当に儲かるのか?
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2023/06/24