コラム⑩ 電気代の正体と、地域が取るべき行動
─ 燃料費調整額を解剖する 地域再エネ会社コラム ─ シリーズ延長篇 | 代表理事 境内 行仁 「電気代が上がっていることは知っている。では、なぜ上がっているのか、正確に答えられるだろうか?」 こう聞かれると、多くの経営者が口ごもる。
「ウクライナの影響で…」「円安で…」——答えとしては間違っていないが、どこがいくら上がっているかまで答えられる人は少ない。それが電気代というものの恐ろしさだ。見えないから管理できない。
管理できないから対策が打てない。 筆者は、地域の中小企業が脱炭素化に取り組む支援事業に長年携わってきた。「電気代が高くて困っている」という声は毎月のように聞くが、「いくら、なぜ高いのかを正確に把握している」という経営者には、ほとんど出会わない。
今回は、電気代の内訳を解剖し、「地域再エネ会社」が担うべき情報提供機能の重要性を考えてみたい。 電気代は5層構造になっている まず、現在の電気代の仕組みを整理しよう。一般的な中小企業の電力料金は、大きく次の5つで構成されている。 ①基本料金(固定) ②電力量料金(使用量連動) ③燃料費調整額(毎月変動) ④再エネ賦課金(全国一律) ⑤託送料金・その他 経営者が「電気代が上がった」と感じる場合、その主因は圧倒的に「燃料費調整額(燃調)」の変動である。
基本料金や電力量料金は契約期間中ほぼ固定だが、燃調は毎月変わる。しかも上限撤廃が進んだ現在、想定外の高値になる可能性がある。 燃調の仕組み ─ 3か月前の輸入価格で決まる 燃料費調整額とは何か。電力会社が発電するために必要な燃料(原油・LNG・石炭)の輸入価格に連動して、毎月の電気代を加減算する仕組みである。仕組みの核心を一行で言うと、 「3か月前の輸入燃料価格の平均に基づき、電力単価が毎月プラスマイナスされる」 つまり、今月の電気代に影響するのは、3か月前に輸入された燃料の価格だ。為替レートも影響する。円安になれば輸入コストが上がり、燃調はプラスに振れる。
2022年のロシアのウクライナ侵攻と急激な円安が重なったとき、燃調が月によって+10円/kWhを超えた地域もあった。 項目 内容 調査対象 全国10電力会社 × 7年間 ─ 840件分の燃調実績値 2016〜2022年 平均燃調 ▲ 2.7円/kWh(マイナス:需要家に有利) 2022年以降の特徴 大幅プラスに転換・一部月は +10円/kWh超 エリア差 同月でも北海道と沖縄では最大 3〜4円/kWh の差 出典:RDo電力価格研究センター(2026年調査) 注目すべきは「2016〜2022年の平均は▲2.7円/kWh(需要家有利)だった」という事実だ。この期間、燃調はむしろ電気代を安くする方向に働いていた。
多くの経営者が「電気代は安いほうだった」と感じていたのは、燃調のおかげでもある。 しかし2022年を境に状況は一変した。燃調は大幅なプラスに転じ、多くの中小企業の電気代を押し上げた。問題は、この変動が今後どちらに振れるかが、誰にも分からない点にある。 「地域再エネ会社」が担うべき情報武装 コラム①〜⑨で見てきたように、「地域再エネ会社」の最大の強みは「地元ブランドによる信用力」だ。しかしそれだけでは足りない。
筆者は今、もうひとつの武器が必要だと考えている。それが「電力価格の見通しを語れる力」である。 「電気代はこれからどうなるのか?」——この問いに答えられる地域の営業マンが、果たして今何人いるだろうか。おそらくゼロに近い。大手の営業マンでさえ、社内の電力調達部門に聞かなければ答えられない。 RDo電力価格研究センターが蓄積してきた燃調データと将来予測モデルは、まさにこの「語れる力」を地域再エネ会社に与えるためのものだ。燃調が今後上振れする可能性があるからこそ、今自家消費型太陽光を導入する経営判断が合理的である
——この論理を、数字と根拠をもって経営者に届けることが、地域再エネ会社の営業力を決定的に差別化する。 電気代の「変動リスク」を制御できる唯一の手段が、自家消費型太陽光である。地域再エネ会社はその「根拠」を語れる会社でなければならない。 次号(⑪)では、2026年11月施行の電力制度改定を読み解き、地域中小企業が今取るべき行動を考察します。
一般社団法人 RDo 代表理事 境内 行仁
本コラムの内容・数値はRDo電力価格研究センター調査および筆者試算に基づくものです。個別の投資・税務判断の根拠とはなりません。
2026/10/26




