太陽光パネル
RDo コラム連載 ─ 地域再エネ会社
電気代の正体と、地域が取るべき行動
一般社団法人 RDo 代表理事 境内 行仁
地域再エネ会社シリーズ コラム ⑩ 2026年10月号 コラム ⑪ 2026年11月号
COLUMN ⑩ 2026年10月

電気代の正体
─ 燃料費調整額を解剖する ─

地域再エネ会社シリーズ延長篇 ─ なぜ電気代は「わからない」のか
電力メーター・電気代イメージ
Photo: Pixabay (CC0) ─ 電力計量器
「電気代が上がっていることは知っている。では、なぜ上がっているのか、正確に答えられるだろうか?」

こう聞かれると、多くの経営者が口ごもる。「ウクライナの影響で…」「円安で…」——答えとしては間違っていないが、どこがいくら上がっているかまで答えられる人は少ない。それが電気代というものの恐ろしさだ。見えないから管理できない。管理できないから対策が打てない。

筆者は、地域の中小企業が脱炭素化に取り組む支援事業に長年携わってきた。「電気代が高くて困っている」という声は毎月のように聞くが、「いくら、なぜ高いのかを正確に把握している」という経営者には、ほとんど出会わない。今回は、電気代の内訳を解剖し、「地域再エネ会社」が担うべき情報提供機能の重要性を考えてみたい。

電気代は5層構造になっている

まず、現在の電気代の仕組みを整理しよう。一般的な中小企業の電力料金は、大きく次の5つで構成されている。

▲ 電気料金の構成イメージ(低圧・中小企業標準)
基本料金
電力量料金
燃調
再エネ賦課金
託送料金等
基本料金(固定)
電力量料金(使用量連動)
燃料費調整額(毎月変動)
再エネ賦課金(全国一律)
託送料金・その他

経営者が「電気代が上がった」と感じる場合、その主因は圧倒的に「燃料費調整額(燃調)」の変動である。基本料金や電力量料金は契約期間中ほぼ固定だが、燃調は毎月変わる。 しかも上限撤廃が進んだ現在、想定外の高値になる可能性がある。

燃調の仕組み ─ 3か月前の輸入価格で決まる

燃料費調整額とは何か。電力会社が発電するために必要な燃料(原油・LNG・石炭)の輸入価格に連動して、毎月の電気代を加減算する仕組みである。仕組みの核心を一行で言うと、

「3か月前の輸入燃料価格の平均に基づき、電力単価が毎月プラスマイナスされる」

つまり、今月の電気代に影響するのは、3か月前に輸入された燃料の価格だ。為替レートも影響する。円安になれば輸入コストが上がり、燃調はプラスに振れる。2022年のロシアのウクライナ侵攻と急激な円安が重なったとき、燃調が月によって+10円/kWhを超えた地域もあった。

RDo電力価格研究センター 調査データ(2026年)
調査対象 全国10電力会社 × 7年間 ─ 840件分の燃調実績値
2016〜2022年 平均燃調 ▲ 2.7円/kWh(マイナス:需要家に有利)
2022年以降の特徴 大幅プラスに転換・一部月は +10円/kWh超
エリア差 同月でも北海道と沖縄では最大 3〜4円/kWh の差
出典:RDo電力価格研究センター(2026年調査、タロウ試算)

注目すべきは「2016〜2022年の平均は▲2.7円/kWh(需要家有利)だった」という事実だ。この期間、燃調はむしろ電気代を安くする方向に働いていた。多くの経営者が「電気代は安いほうだった」と感じていたのは、燃調のおかげでもある。

しかし2022年を境に状況は一変した。燃調は大幅なプラスに転じ、多くの中小企業の電気代を押し上げた。問題は、この変動が今後どちらに振れるかが、誰にも分からない点にある。

「地域再エネ会社」が担うべき情報武装

コラム①〜⑨で見てきたように、「地域再エネ会社」の最大の強みは「地元ブランドによる信用力」だ。しかしそれだけでは足りない。筆者は今、もうひとつの武器が必要だと考えている。それが「電力価格の見通しを語れる力」である。

「電気代はこれからどうなるのか?」——この問いに答えられる地域の営業マンが、果たして今何人いるだろうか。おそらくゼロに近い。大手の営業マンでさえ、社内の電力調達部門に聞かなければ答えられない。

RDo電力価格研究センターが蓄積してきた燃調データと将来予測モデルは、まさにこの「語れる力」を地域再エネ会社に与えるためのものだ。燃調が今後上振れする可能性があるからこそ、今自家消費型太陽光を導入する経営判断が合理的である——この論理を、数字と根拠をもって経営者に届けることが、地域再エネ会社の営業力を決定的に差別化する。

COLUMN POINT
電気代の「変動リスク」を制御できる唯一の手段が、自家消費型太陽光である。
地域再エネ会社はその「根拠」を語れる会社でなければならない。
次号(⑪)では、2026年11月施行の電力制度改定を読み解き、
地域中小企業が今取るべき行動を考察する。
代表理事 境内 行仁

COLUMN ⑪ 2026年11月

制度改定が示す電力価格の未来
─ 地域中小企業は今何をすべきか ─

地域再エネ会社シリーズ延長篇 ─ 燃調の「構造変化」が始まった
屋根上の太陽光パネル
Photo: Pixabay (CC0) ─ 中小企業・工場屋根上の自家消費型太陽光
「2026年11月1日、あなたの電気代が静かに変わった。」
関西電力が、燃料費調整額の算定方式を大幅に改定したのだ。

大半の経営者はこのニュースを知らないだろう。電力会社が制度改定の告知を出しても、専門的な内容は難解で、「で、電気代は上がるのか、下がるのか」がすぐには分からない。筆者はこの改定を詳細に分析した。結論から言おう。これは「燃調の構造が変わった」という信号である。

関西電力 制度改定(2026年11月1日施行)の内容

今回の改定の核心は、燃調を計算する際に用いる「基準燃料価格」と、各燃料の「係数」の見直しにある。

改定項目 改定前 改定後(2026-11-01〜) 評価
基準燃料価格(原油換算) 47,000円/kL 37,500円/kL 基準が下がる=燃調プラス方向に働きやすくなる
LNG係数 大 大幅減 LNG価格低下の恩恵が燃調に反映されにくくなる
原油係数 小 約7.5倍増 原油高騰の影響が燃調に大きく出るようになる
ERU(長期電力価格変動リスク調整単価) 3.7円/kWh 3.7円/kWh(維持) 当面変更なし(2027年2月以降に再算定予定)
出典:RDo電力価格研究センター分析(関西電力公表資料に基づく)

この改定が意味すること

ポイントを整理しよう。基準燃料価格が引き下げられることは、「現在の実際の燃料価格と基準値の乖離が広がりやすくなる」ことを意味する。これは、燃調がプラス方向(電気代増加)に振れやすい構造に変わったということだ。

さらに、LNG係数が減ってLNG価格低下の恩恵が届きにくくなり、原油係数が大幅に増えたことで、原油高騰の痛みが直接燃調に跳ね返ってくる。地政学リスクや中東情勢で原油が高騰するたびに、電気代が押し上げられる構造が、より明確になったということである。

重要な示唆:今後、円安・原油高が重なる局面(歴史的にみれば決して珍しくない)があれば、中小企業の電気代は再び急騰するリスクがある。2022年の再現は「ありえない話」ではないのだ。

他電力会社も追随するか?

関西電力は今回の制度改定で他社に先行した。しかし電力各社は同様の算定構造を持っており、関西電力の改定はある意味「先例」となる。これに倣う電力会社が出てくる可能性は充分にある。

RDo電力価格研究センターでは、今後も各社の制度改定動向を継続モニタリングし、エリア別の電力価格予測を更新していく。地域再エネ会社は、この情報を需要家に届ける最前線になるべきだ。

「今決断」に合理性がある理由

地域再エネ会社の営業の現場で、よく聞く言葉がある。「もう少し様子を見てから考えます」。電気代の問題は「様子を見ていると損をする」案件の典型である。

Roof Plus(15年割賦スキーム)を今導入すれば、初年度から電力料金削減効果が発生し、割賦返済期間中は「固定コスト」として管理できる。つまり、燃調の上昇リスクをヘッジできるのは「今導入すること」だけである。

「電気代が下がってから考える」という判断は、「下がるかもしれない電気代の低下メリットを取りに行く代わりに、上昇した場合の損失リスクも取る」という意味だ。経営者として、どちらのリスクを取るべきか。答えは明快だろう。

RDo電力価格研究センター ─ 改定影響シミュレーション概要
今回の制度改定の性格 燃調がプラス方向に振れやすくなる構造変化
LNG価格下落の恩恵 従来比で電気代に届きにくくなる
原油高騰時の影響 従来比で電気代に出やすくなる(係数 約7.5倍)
ERU(Roof Plus採用値) 3.7円/kWh 維持(2027年2月以降に再算定予定)
今後の注目ポイント 他8社の追随改定動向・2027年2月のERU再算定
出典:RDo電力価格研究センター(関西電力公表資料・RDo独自分析)

「地域再エネ会社」が持つべき武器とは

コラム⑩と⑪で一貫して伝えたいことがある。それは、地域再エネ会社の役割は「Roof Plusを売ること」ではなく、「電力価格リスクという経営課題を、地元の言葉で経営者に届けること」だということだ。

商工会議所・地銀・地方ガス会社——これら地域中核企業が「地域再エネ会社」の理事として名を連ねるとき、その信用力と顧客ネットワークに加えて、「電力価格の見通しを語れる力」が加わる。これが地方創生型・脱炭素事業モデルの真髄であり、大手PPA事業者には決して真似できない「地域の強み」である。

SERIES CONCLUSION — コラム⑩⑪を通じて
燃調という「見えないリスク」を見える化し、
今動く根拠を地域に届ける。
それが「地域再エネ会社」の存在意義である。
コラム① ─ ⑪で描いてきた「地域再エネ会社」の全体像。
設立に向けた具体的なステップは、RDoまでお問い合わせください。
代表理事 境内 行仁