カーボンニュートラル社会実現にむけて
1. 「Roof Plus 社会還元プログラム」メンバーズ俱楽部 創設の背景
RDoは、令和3年度から4年度にかけて、5つの自治体における再生可能エネルギー導入目標設定に向けて地域内の温室効果ガス排出状況や、再生可能エネルギーの導入状況及び、導入ポテンシャルについて現状分析を行うとともに地域の自然・経済・社会的課題調査を実施した。
調査分析を通じて、地域で導入可能な再生可能エネルギー技術について絞り込みを行うとともに中期目標として2030年度までの導入に用いる既存技術(スキーム)と、2050年度までに実装が期待される革新的技術・ノウハウの動向調査も併せて実施している。
これらの調査結果から、2030年までの中期目標達成にむけ、地域が主体となって、最優先に推進すべき「再エネ事業分野」と「普及の課題」が明確になった。 RDoはこれらの結果を踏まえ、同じ課題を抱える全国自治体の脱炭素実行支援を目的として、先行すべき再エネ事業分野の普及課題を解決するソリューションスキームを研究し、専門ノウハウ有する民間企業と連係して 実践策を開発する組織「Roof Plus社会還元プログラム」メンバーズ倶楽部を2023年6月に発足した。
「Roof Plus社会還元プログラム」とは、民間企業アライアンスによる国内初のソリューションスキームの開発・普及をもって、地域脱炭素の実行支援を目指す専門企業で構成されたネットワーク組織である。
2. 地域脱炭素(区域施策編): 地域に求められる再エネ導入戦略の考察
図(1)は、再エネ事業の取り組み主体別に見た俯瞰図である。
- 象限 (A):
- 地域の再エネ導入戦略策定にあたり、再エネ価値が地域に残らないFIT型再エネであり、2030年にむけては対象外。
大手エネルギー会社が主体となって開発をすすめる同分野は、地域における2050年以降(FIT終了後)の再エネ基幹インフラとして重要な施設となる。
- 象限 (B):
- 非FIT市場のうち、大手企業の屋根上に太陽光を設置する自家消費型再エネ事業は、大手エネルギー会社による積極的な開発が期待できるもので、自走市場とも言える。
- 象限 (C):
- 営農型太陽光や、ため池太陽光は、地域に委ねられた非FIT市場である。一方、事業の経済性ならびに、そもそもの系統混雑等の課題解決途上にあり、2030年度目標達成にむけては実現が難しい。
- 象限 (D):
- 自家消費型太陽光のなかでも、小規模・中小企業の屋根上への設置は、地域に委ねられた市場といえる。大手エネルギー会社の場合、 規模が小さく営業効率が悪い先ならびに、信用力脆弱な先は提案対象とされないケースが多い。地域に多い中小企業を対象とした自家消費型太陽光の普及は電力高騰化対策にも通ずるものであり、2030年目標達成にむけては、地域として独自の支援策を講じるなど、先行して取り組まなくてはならない市場といえる。
- ※1. RDo調査推定値(業務用45GWの内数)
- ※ 潜在市場 グリーン成長戦略(出典:電中研の分析にもとづく)
3. 地域脱炭素(区域施策編): 中小企業むけ自家消費型太陽光普及の課題考察
中小企業における自家消費型太陽光導入に際して、15年程度の資金調達ができれば「▲電気料金 >返済額」となるケースが多い。すなわち、長期のイニシャルレス導入スキームを活用して「再エネ電気」に代えれば、初年度から電気料金削減効果が期待できるのである。
自家消費型再エネ普及の最有力スキームは投資負担ゼロで設置できる「オンサイトPPA」とされている。
一方、PPA事業を展開する大手エネルギー会社の場合、設置先企業の信用力が、調査機関の評点50点未満の先は提案対象外とされるケースが多い。図(2)は、信用調査機関の信用ランク別企業数の分布表で、50点未満の先は企業数の80%程度であることから、ほとんどの中小企業はPPA提案をうけられない可能性がある。
4. 地域脱炭素(区域施策編): 中小企業むけ自家消費型太陽光普及にむけて
中小企業への自家消費型太陽光の普及にむけては、大手PPA事業者に頼ることなく、地域の担い手らが連携して設立する「地域再エネ会社」が、15年程度の実質的なファイナンスを提供して電力削減効果(「▲電気料金 > 返済額」)を創出せんとする新たな動きがある。
自家消費型太陽光普及の最有力スキームは、費用負担ゼロで設備を設置し、初年度から電力料金削減効果(「▲電気料金>返済額」)を生み出すイニシャルレスサービスである。
一方、イニシャルレス導入スキームを展開する地域再エネ会社にヒアリングしたところ、設置先企業の「信用評点が50点未満の先」ならびに、「300kW未満の太陽光」では、営業効率の悪さを理由に、提案自体を敬遠する傾向があることがわかった。
こうした事情を踏まえて、地域中小企業に自家消費型太陽光を最大限普及するためには、中小企業専用の長期15年型イニシャルレス導入スキーム(図3)「Roof Plus」の開発ならびに、小口でも工事対応できる地元施工者ネットワークの組成と、工事ノウハウの地域蓄積を図る研修体制の構築が必要である。
図(3)
評点区分(信用評価機関) | ファイナンス限度額 |
---|---|
~45点以下 | 10,000,000円 |
46点~ 50点 | 15,000,000円 |
51点~ 55点 | 30,000,000円 |
56点~ 60点 | 40,000,000円 |
61点以上※ | 40,000,000円 |
※信用力が高くても、営業効率の観点から300kW(50百万相当)未満は提案できない傾向
5. 地域脱炭素(区域施策編)実行支援策: 中小企業むけ自家消費型太陽光普及スキームとは
中小企業における自家消費型太陽光導入に際しては、15年程度のファイナンスが調達できれば「▲電気料金 >返済額」となるケースが多いことから、RDoは、リース、損保、中古PVリセール事業者等の民間ノウハウを結集して、中小企業専用のイニシャルレス導入スキーム「Roof Plus」(図中①②③)を開発するに至った。
Roof Plusは、太陽光設備を費用負担ゼロで設置し、電力料金の削減効果(「▲電気料金>返済額」)が期待できる長期イニシャルレススキームである。 図(4)
Roof Plusは、信用評価機関の評点50点前後で、従来は自家消費型太陽光の普及が及ばなかった中小企業層への導入拡大を図るもので、審査手法の簡易化ならびに、デフォルト時の回収スキームなどで具現化する国内初のスキームとなる。認証機関によるCO2削減量の定期報告サービス(図中②)もパッケージ化することで、社会的課題であるサプライチェーンの脱炭素化対策(図中④)にも対応する。
Roof Plus導入企業は、初年度からの電力料金削減効果を期待できるのみならず、中小企業経営強化税制適用者には一括償却効果等の大きなメリットが見込めるため、地域脱炭素を加速する新しい支援策として大いに期待できる。