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第二世代PPA 「Roof Plus」 - 当機構が推奨する「20年間上昇率ゼロ%」比較の方法論 –

第二世代PPA 「Roof Plus」のGX導入評価報告書について
「20年間上昇率ゼロ%」比較の方法論

——最悪ケース優位性の証明とその意義

GX導入評価報告書が採用する「20年間電力上昇率ゼロ%」という前提は、一見非現実的に見える。しかしこれは、電力価格予測という本質的な不確実性を排除しつつ、Roof Plusの経済的優位性を「最も保守的な条件下で証明する」という方法論上の選択である。本稿ではその論理構造と合理的根拠を論証する。

RDo価格研究センター|2026年7月
1. 問題設定:比較の土台をどこに置くか
エネルギー投資の経済評価において、最も論争を生む変数は「将来の電力価格」である。投資家・需要家・電力会社・政策担当者いずれも、将来の電力価格に関しては確実な予測を持てない。国際エネルギー機関(IEA)のシナリオでも2050年の電力価格予測には幅があり、エネルギー危機(2022年)はあらゆる事前予測を凌駕した。

GX導入評価報告書が解こうとした問いは次の通りである:「将来予測を一切使わなくても、Roof Plusは経済的に有利と言えるか?」

2. 「ゼロ%上昇」の意味——保守性の二重構造
「20年間上昇率ゼロ%」は、Roof Plusにとって最も不利な前提である。なぜなら:

電力価格が下がれば電力会社継続コストも下がり、Roof Plusの相対的優位は縮小する
電力価格が上がれば(過去実績では年平均5.7%上昇)、Roof Plusの優位は拡大する
ゼロ%とは「電力価格の上昇効果をRoof Plusに一切加算しない」最保守的状態を意味する
この前提下で経済的優位性が確認できれば、「どのような価格シナリオでも成立する最低ラインの優位性」が証明される。これを本稿では「最悪ケース優位性(Worst-Case Superiority)」と呼ぶ。

最悪ケース優位性の論理構造
命題:「電力価格が20年間ゼロ%上昇という最もRoof Plusに不利な条件下でも、Roof Plusの総コスト(割賦代金)は電力会社継続の税引後コストと同等以下である」

 ↓ この命題が真であれば:

帰結:「電力価格が実際に上昇するほど(実績:年平均5.7%)、Roof Plusの優位性は拡大する」
3. 電力価格予測を「使わない」ことの学術的合理性
将来の電力価格を予測してシミュレーションに組み込む方法(上昇率シナリオ法)は一般的に行われるが、次の欠点を持つ:

モデル依存性:採用する上昇率の前提次第でシミュレーション結果が大きく変動する。「5.7%で計算すれば有利に見える」「2.0%で計算すれば不利に見える」——つまり前提の恣意性が結論を左右する
反証容易性:電力価格が上昇率の想定を下回れば、「シミュレーションは誇張だった」と反論される
説明責任の重さ:「なぜその上昇率を使ったか」について需要家・専門家が納得できる根拠を示す責任が生じる
これに対し「ゼロ%」という前提は、上記の問題を根本から回避する:上昇率予測を使わないため、モデル依存性がなく、反証余地が最小化される。「最保守的条件下での比較」は、仮定の方向性についての反論を封じる構造を持つ。

4. 「ゼロ%はあり得ない」という反論への応答
「ゼロ%は現実的でない」という反論は正しい。過去13年の実績(2010〜2023年度)では産業向け電力価格は年平均5.7%上昇しており、ゼロ%継続はほぼ起こりえない(詳細はVol.3参照)。

しかしこの反論は本手法の趣旨に反している。「ゼロ%はあり得ない」ということは「電力価格は上昇する」という認識を含意する。Roof Plusにとって電力価格の上昇は優位性の拡大である。反論が正しいほど、Roof Plusの実際の優位性は報告書が示す値より大きくなる。

論理的帰結
「ゼロ%はあり得ない」という反論は、「報告書が示す差額より、実際の差額はさらに大きい」という主張に等しい。この反論はRoof Plusを否定するものではなく、優位性をさらに強める根拠となる。
5. 類似手法との比較——工学・財務の慣行との整合性
最保守的条件での優位性証明は、工学・財務分野でも広く採用されている手法である:

構造設計における「安全側の設計(Conservative Design)」——最大荷重条件での安全性を保証することで、通常条件での安全は自明となる
財務リスク評価における「ストレステスト(Stress Test)」——最悪シナリオでの健全性を示すことで、通常シナリオの健全性を担保する
「20年間ゼロ%上昇」は電力価格のストレステストである。このストレスをかけた状態でもRoof Plusが優位であれば、より現実的な条件では確実に優位と言える。

6. まとめ
「20年間電力上昇率ゼロ%」という前提は、将来予測の不確実性を排除しつつ「最悪ケース優位性」を証明する方法論上の選択である。この手法は電力価格の予測精度を前提としないため、電力会社料金設計の専門家がどのような将来シナリオを想定していても、基本的な結論は揺るがない。超保守的設定が、比較の信頼性の源泉となっている。

本稿引用データ
電力統計
資源エネルギー庁「電力調査統計」産業向け電力単価推移(2010〜2023年度)
URL
資源エネルギー庁 https://www.enecho.meti.go.jp/
次稿予告
Vol.2:燃料費等調整単価の「1年平均固定」方法論